「うちは小さいから狙われない」
——この思い込みが一番危ない理由
「うちみたいな小さい会社、誰も狙わないでしょ」——この言葉を、ITの現場で何度聞いたかわからない。残念ながら、これは完全な誤解です。サイバー攻撃の被害を受けた企業の約半数は中小企業。規模の小ささは「安全」を意味しません。むしろ逆です。
攻撃者は「有名な会社」を狙っていない
「大手企業や有名ブランドが狙われる」——そんなイメージをお持ちの方は多いでしょう。しかし実態はまったく異なります。
空き巣は「有名な豪邸」を狙うのではなく、「鍵のかかっていない家」を狙います。インターネットも同じです。攻撃ツールが24時間365日、全世界のIPアドレスを自動的にスキャンし、脆弱な入口を探し続けています。
あなたの会社が有名かどうか、規模が大きいかどうかは関係ありません。「入りやすいかどうか」だけが問われています。
重要なのは、攻撃は人間が手動でやるのではなく、自動化されたツールが無差別にスキャンしているという点です。攻撃者はあなたの会社を「選んで」いません。ただ、鍵のかかっていない扉を見つけて、入っているだけです。
攻撃者が使うツールは、インターネット上の全IPアドレスに対して「脆弱なポートはないか」「古いソフトウェアはないか」を機械的に問い合わせ続けます。新しいIPアドレスが公開されると、数分〜数時間以内にスキャンが届くことも珍しくありません。「うちの会社など知られていない」という前提は、この仕組みの前では意味を持ちません。
数字で見る「中小企業被害の実態」
「なんとなく危なそう」ではなく、数字で現状を把握しておきましょう。
上記は IPA(情報処理推進機構)資料および米国の複数調査をもとにした概算・参考値です。国や調査時期によって数値は異なりますが、「中小企業が標的になっている」という傾向は一貫して報告されています。
身代金800万円を支払えたとしても、データが戻る保証はありません。さらに、支払った事実が「次の攻撃にも応じてくれる会社」というシグナルになることも指摘されています。
なぜ中小企業が「格好のターゲット」なのか
中小企業が狙われやすい理由は、明確です。攻撃者の視点から整理すると、次の4点が浮かび上がります。
・セキュリティ専任担当者がいない——「誰かがやっているはず」で誰もやっていない
・古いOSや機器をそのまま使っている——サポート切れのWindowsやルーターが放置されている
・「うちには盗む情報がない」と思っている——顧客リスト・口座情報・取引先情報は十分な価値がある
・大企業との取引がある——そこへの「踏み台」として価値がある(サプライチェーン攻撃)
特に最後の「踏み台」という視点は見落とされがちです。大手取引先のシステムに直接侵入するより、セキュリティが手薄な中小サプライヤーを経由する方が攻撃者にとっては簡単です。あなたの会社の情報ではなく、あなたの会社を踏み台にして取引先を攻撃することが目的になる場合があります。
「知らなかった」では済まない3つの理由
「被害に遭っても、うちの規模なら大きな問題にならないだろう」——そう思う方もいるかもしれません。しかし法的・ビジネス的な観点から見ると、そうはいきません。
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1
個人情報保護法による報告・公表義務
顧客・従業員の個人情報が漏洩した場合、個人情報保護委員会への報告と、本人への通知が法律で義務付けられています。「知らなかった」「小さい会社だから」は免責事由になりません。
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2
取引先への損害賠償責任
自社のシステムが踏み台にされ、取引先に損害を与えた場合、損害賠償を求められる可能性があります。契約によっては、セキュリティ対策の不備が契約違反と判断されるケースもあります。
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3
信頼回復にかかる時間とコスト
情報漏洩が公になった後、顧客・取引先・求職者からの信頼を取り戻すには、年単位の時間と多大なコストがかかります。「謝罪すれば終わる」話ではありません。
まず「自社の現状」を知ることから
「何から手をつければいいかわからない」という方に向けて、今すぐ着手できる3つの確認ポイントを整理します。特別な知識がなくてもできることから始めましょう。
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1
外部から見たときに何が見えているかを確認する
自社のWebサイトやサーバーが、外部からどんな情報を公開しているかを把握していますか?意図せず設定ファイルや管理画面が外から見えている状態になっているケースがあります。まずは「外側から自社がどう見えるか」を確認することが第一歩です。
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2
古い機器・OSのリストアップ
オフィスで使っているルーター、NAS、パソコンのOSを確認してみましょう。「Windows 7」「サポート切れのルーター」が現役で動いていませんか?サポートが終了した機器はセキュリティパッチが提供されず、既知の脆弱性がそのまま放置された状態になります。
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3
パスワード管理の実態を確認する
「全員が同じパスワードを使っている」「退職者のアカウントが残っている」「パスワードをメモ帳に書いている」——こうした状況は珍しくありません。まず現状を把握し、問題がある箇所を洗い出すことが対策の出発点です。
まとめ——「知らない」が最大のリスク
- 攻撃者は「有名な会社」ではなく「入りやすい会社」を自動的に探している
- 中小企業はセキュリティ対策が手薄なため、むしろ格好のターゲットになりやすい
- 「盗む情報がない」は誤解——顧客情報・取引先データ・踏み台としての価値がある
- 被害後の損害賠償・法的義務・信頼回復コストは、予防コストの何倍にもなる
- まず「外部から自社がどう見えるか」を確認することが、すべての出発点
5分で外部から見た自社のリスクがわかります
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「現状を知る」ところから、今日始めてみましょう。
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出典・参考
IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威」/警察庁 サイバー犯罪対策資料/米国 NCSA(National Cyber Security Alliance)中小企業調査
執筆:株式会社リープリック(ITインフラ設計・構築・保守 14年)