中小企業のIT費用、実は3割は削れる
——保守契約・リースの見直し方
毎月払っているIT費用、本当に全部必要ですか?複合機のリース料、よく確認もしていない保守契約、いつの間にか増えたクラウドサービスの月額料金——。多くの中小企業では、IT費用全体の3割程度は削減できる余地があると言われています。まず「何にいくら払っているか」を把握することが、見直しの第一歩です。
よくある「無駄なIT費用」3パターン
IT費用の無駄は、特定の業種や規模に限った話ではありません。「なんとなく契約したまま」「担当者が変わって引き継がれたまま」という状態で、毎月出費が続いているケースが非常に多くあります。
パターン①:複合機のリース契約
複合機(コピー機)のリースは、中小企業のIT費用のなかで見直し効果が最も大きい項目のひとつです。
「月3万円のリース契約を5年間続けると、総支払額は180万円。ところが同等スペックの複合機を買い切りで購入すると5万円だった」——というケースは珍しくありません。
さらに、フルカラー印刷のカウンター料金がセットになっているにもかかわらず、実際にはほぼモノクロしか使っていない、という会社も多く見られます。カラー印刷1枚あたり数十円のカウンター料が積み上がり、毎月の請求書を見ても「まあこんなものか」と流してしまっているケースです。
リース期間中は自由に解約できないため、満了のタイミングを逃すと自動更新されてしまいます。リース満了の1〜2年前から切り替えを検討し始めることが重要です。
パターン②:使っていない保守契約
「壊れたらすぐ来てもらえる」という安心感から、機器の保守契約を結んでいる会社は多いです。しかし実態を確認してみると、「そもそもほとんど壊れない機器に月額保守を払い続けている」「保守対象の機器がすでに廃棄されているのに契約だけが残っている」というケースが実在します。
・ルーターやスイッチに月額保守をつけているが、過去5年間で一度もトラブルがない
・ITサポート会社と「月額○万円の包括保守契約」を結んでいるが、何を対象にしているか把握できていない
・保守対象として記載された機器が、すでにオフィスから撤去されている
「壊れたら呼ぶ」というスポット対応で十分な機器に対しては、月額保守は不要なコストになりえます。一方で、セキュリティ機器やサーバーなど、止まると業務全体に影響する機器の保守は削ってはいけません。機器ごとに「止まったときの影響」を整理してから、保守の要否を判断するのがポイントです。
パターン③:誰も使っていないクラウドサービス
SaaSやクラウドツールは、無料トライアルや「とりあえず試してみた」から始まるケースが多く、気づかないうちに課金が積み上がりがちです。
・退職した社員のアカウントが削除されず、ライセンス費用が発生し続けている
・トライアル期間終了後に自動で有料プランに移行し、解約を忘れたまま数ヶ月が経過している
・導入当初は使っていたが、別のツールに移行した後も解約手続きをしていない
クラウドサービスの便利さは、裏を返すと「知らないうちに増えていく」という落とし穴でもあります。クレジットカードや口座引き落としに設定されていると、請求書を確認しない限り気づかないケースも多いです。
見直しの進め方——3ステップ
「どこから手をつければいいかわからない」という方に向けて、実際に使える手順を整理します。特別なツールや知識は不要です。
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1
IT費用を「見える化」する
まず銀行口座やクレジットカードの引き落とし明細を1年分洗い出し、IT関連の支出をすべてリストアップします。「何にいくら払っているか」を一覧にするだけで、初めて全体像が見えてきます。金額の大きい順に並べると、優先的に見直すべき項目が自然に浮かび上がります。
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2
「本当に使っているか」を確認する
リストアップしたサービスや機器について、実際の利用状況を確認します。クラウドサービスならログイン履歴やアクティブユーザー数、複合機なら印刷枚数のカウンター、保守契約なら過去1年の呼び出し回数。「払っているのに使っていない」ものが明確になります。
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3
交渉・解約・切り替えを実行する
リースは中途解約に違約金が発生することが多いため、満了タイミングに合わせた計画的な切り替えが必要です。クラウドサービスは多くが月単位での解約が可能なため、すぐに動けます。保守契約は更新時に「対象機器の棚卸し」を条件に交渉することで、費用を圧縮できるケースがあります。
削減より大切なこと——セキュリティに投資が必要な理由
ここまで、ITコストの削減について話してきました。しかし、削ってはいけないものがあることも、同時に理解しておく必要があります。
セキュリティ対策にかかるコストは、事故が起きたときの復旧コストに比べれば、ほとんどの場合で微々たるものです。たとえば、ウイルス感染やランサムウェアによってシステムが停止した場合、データ復旧費用・業務停止による損失・顧客への対応・信頼回復のコストは、予防にかけた費用の何倍にもなります。
・UTMやファイアウォールなどのセキュリティ機器の保守・更新
・ウイルス対策ソフトのライセンス
・データのバックアップ(特にクラウドへのオフサイトバックアップ)
・VPNや認証システムのセキュリティアップデート
コスト削減で本当に重要なのは「何にお金をかけていないか」を把握することです。必要なセキュリティ投資がどこかで抜け落ちていないか——それを確認せずに費用だけを削ると、思わぬリスクを抱えることになります。
「IT費用の全体を把握する」という作業は、削減の機会を見つけると同時に、セキュリティの抜け漏れを発見するきっかけにもなります。費用の一覧を作る際には、セキュリティ関連の支出がきちんと含まれているかも、あわせて確認してみてください。
まとめ——今日から始められるチェックリスト
- 銀行・クレカの引き落とし明細を1年分洗い出し、IT費用をリスト化する
- 複合機リースの満了時期を確認し、切り替え検討のスケジュールを立てる
- 保守契約の対象機器が現在も実在しているか、棚卸しをする
- クラウドサービスのアクティブユーザー数を確認し、退職者のアカウントを削除する
- 「削れるもの」と「削ってはいけないもの(セキュリティ)」を区別する
- セキュリティ関連の費用が意図的に組み込まれているか確認する
まずは自社のセキュリティリスクから把握してみませんか?
IT費用を削減する前に、削ってはいけない箇所を知っておくことが大切です。
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執筆:株式会社リープリック(ITインフラ設計・構築・保守 14年)
中小企業のIT環境の設計・構築・保守を手がけてきた経験をもとに、実態に即した情報をお届けしています。