📖 入門 2026年5月 | 株式会社リープリック

不審なメールの見分け方
——フィッシング攻撃の手口と社員教育のポイント

「ヤマト運輸から荷物のお知らせ」「三菱UFJ銀行:セキュリティ確認のお願い」——そのメール、本物ですか?フィッシングメールは年々精巧になり、もはや見た目だけで判断することはほぼ不可能です。社員1人でも騙されれば、会社全体が危険にさらされます。見分けるポイントと、組織として取るべき対策を整理します。

フィッシングメールの現状——なぜ見分けにくいのか

かつてのフィッシングメールは、日本語がおかしかったり、送信元が明らかに怪しいアドレスだったりと、比較的見破りやすいものでした。しかし今は違います。

攻撃者は本物のメールを徹底的に研究し、デザイン・文面・リンクの見た目まで忠実に再現します。ロゴ、フォント、文体、差出人名——すべてが本物そっくりに作られています。警察庁の報告によると、フィッシングの報告件数は近年急増を続けており、2023年には年間100万件を超える届け出が確認されています。

100万件超
フィッシング報告件数(2023年・警察庁)
3位以内
中小企業のサイバー被害原因に常にランクイン
1通
社内で1人が開くだけで被害が発生しうる

よくある手口——3つのパターン

攻撃者が最もよく利用する「なりすまし対象」には傾向があります。次の3つは特に注意が必要です。

⚠️ フィッシングで多用される「なりすまし対象」

宅配業者(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便など):「不在通知」「再配達のお知らせ」を装い、偽サイトへ誘導して個人情報・クレジットカード情報を詐取する。宅配利用率が高く、社員も疑いにくい。

金融機関・決済サービス(銀行・Amazon・PayPayなど):「不正利用を検知しました」「アカウントが一時停止されました」などの緊急文言でクリックを誘発する。焦りによる判断の鈍化を狙う。

取引先・社内の上司:実在する取引先や上司の名前・メールアドレスを偽装し、振込依頼や機密情報の送付を求める「ビジネスメール詐欺(BEC)」。金額が大きくなりやすい。

偽の制服を着た配達員——どうやって見分けるか

フィッシングメールを理解するのに、次のたとえが役立ちます。

💡 フィッシングをたとえると

本物そっくりの制服を着た偽の配達員が玄関に現れたとします。荷物も持っているし、バッジも本物に見える。見た目だけでは「本物か偽物か」を判断するのはほぼ不可能です。

では、どうやって見分けるか?——「その荷物の配送番号を、自分で公式サイトから調べる」しかありません。配達員が差し出した紙のURLではなく、自分でブラウザに公式サイトのアドレスを打ち込み、追跡番号を入力して確認する。これがフィッシング対策の本質です。

メールも同じです。リンクをクリックするのではなく、公式アプリやブックマークから直接アクセスして確認する習慣が、フィッシングから身を守る最も確実な方法です。

3つの確認ポイント——技術的な知識がなくてもできること

「見た目」で判断するのは限界があります。代わりに、次の3点を機械的に確認する習慣を社内に広めてください。

📋 「至急ご確認ください」は危険信号

フィッシングメールの多くは「緊急性」を演出します。「24時間以内に確認しないとアカウントが停止されます」「至急ご対応ください」といった文言は、冷静な判断をさせないための心理的トリガーです。急かされるほど、立ち止まって確認することが重要です。本物の企業が、メール1通でアカウントを即停止することは通常ありません。

「1人の油断が会社全体の危機」——組織として取るべき対策

個人の注意力に頼るだけでは限界があります。100人いれば、1人は騙される可能性があります。フィッシング対策は、個人のリテラシー向上と組織的な仕組みづくりを両輪で進める必要があります。

社員教育——知識よりも「習慣」を作る

セキュリティ研修の落とし穴は、「知識を教えて終わり」にしてしまうことです。大切なのは、不審なメールを受け取ったときの行動フローを体に染み込ませることです。

💡 社内に広めたい「不審メール対応の3ステップ」

Step 1:開かない・クリックしない——少しでも怪しいと感じたら、まずメールを閉じる。

Step 2:報告する——「自分で判断する」のではなく、担当部署・上長にすぐ共有する。

Step 3:公式ルートで確認する——気になる内容であれば、メールのリンクではなく公式サイト・電話で直接確認する。

フィッシングメールを受け取った社員が「やばいと思ったけど、大げさかと思って黙っていた」となるのが最悪のパターンです。「報告したら褒める」文化を作ることが、実は最も効果的な対策です。

技術的な対策——メールが「届く前」に防ぐ

社員教育と並行して、技術面での設定も重要です。特にDMARC・SPF・DKIMの設定は、自社ドメインが第三者に悪用されるのを防ぐために不可欠です。

⚠️ 自社のSPF・DMARCが設定されていないと

攻撃者があなたの会社のドメイン(例:@yourcompany.co.jp)を使ってフィッシングメールを送ることができます。取引先や顧客が「yourcompany.co.jpから来たメール」を信じてしまい、被害に遭う——しかも加害者は自社になります。設定の有無は外部から確認できます。


まとめ——今日から始められること

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出典・参考

警察庁「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2024年)/フィッシング対策協議会 月次報告書

執筆:株式会社リープリック(ITインフラ設計・構築・保守 14年)