💭 思い込み 📖 ITリテラシー不問 2026年5月 | 株式会社リープリック

「ITはベンダーに任せてある」
が一番危ない理由

「セキュリティのことはITベンダーさんがやってくれています」——この一言を、中小企業の経営者からよく聞きます。しかし現実には、ITベンダーの保守契約にセキュリティ診断は含まれていないことがほとんどです。「任せてある」という安心感こそが、気づかぬうちにリスクを積み上げている原因かもしれません。

ITベンダーの契約範囲——実は「診断」ではなく「対応」

まず、一般的なITベンダーとの保守契約が何をカバーしているか整理しましょう。多くの場合、契約に含まれるのは次のような内容です。

📋 一般的な保守契約の対象範囲

・機器の障害対応(壊れたら直す)

・ソフトウェアのバージョンアップ対応

・ヘルプデスク(操作方法の質問対応)

・定期的な死活監視(サーバが落ちていないか確認)

これらはどれも「問題が起きたときに対応する」か「機器が動いているかを確認する」ことです。 セキュリティ上の脆弱性を能動的に探す「診断」行為は、別途の有償サービスになるのが業界標準です。 つまり、普段の保守業務の中でベンダーが自発的に「御社のシステムに侵入できる穴がないか調べます」とはやらないのです。

⚠️ よくある誤解

「ベンダーが毎月来ている → 安全を確認してくれている」

→ 実態は「機器が正常に動いているか」の確認です。セキュリティの穴を調べているわけではありません。

たとえ話:管理会社に任せた建物の「死角」

ITが専門でない方のために、建物の管理に例えて考えてみましょう。

💡 ITベンダーと管理会社の関係

あなたがオフィスビルのオーナーだとします。管理会社と契約し、清掃・設備点検・緊急対応を任せています。管理会社はとても仕事が丁寧で、エレベーターのメンテナンスも電気設備の点検も欠かさず行っています。

しかし、防犯カメラの死角になっている裏口、鍵が古くてすぐにこじ開けられる非常扉——こういった「セキュリティ上の弱点」を能動的に探して報告するのは、管理会社の契約範囲外です。「言われたこと以外はやらない」のが契約というものです。

ITベンダーも同じです。保守の仕事はしっかりやってくれていても、あなたのシステムの「裏口」がどこにあるかは、誰も調べていないかもしれません。

防犯カメラの死角や施錠の強度は、建物の「オーナー」が最終的に責任を持って確認しなければなりません。それと同様に、自社のシステムのセキュリティ状態は、経営者が把握すべき経営リスクのひとつです。

事故が起きたとき、ベンダーに責任を問えるか?

「何かあればベンダーが責任を取ってくれる」——残念ながら、契約書を読むとそうはなっていないことがほとんどです。

免責
ほぼすべての保守契約にセキュリティ事故の免責条項あり
上限
損害賠償が発生しても「月額保守料の○ヶ月分」が上限のケースが多い
範囲外
「診断を依頼していなかった穴」からの被害は対象外になりやすい

保守ベンダーに責任を問うためには、「その穴の対策を依頼していた」「その穴の存在をベンダーが認識していた」という事実が必要です。普段の保守作業の範囲外のことについて、ベンダーが法的責任を負う根拠は薄いのが現実です。

⚠️ 実際に起こりうる会話

「なぜ防いでくれなかったのか」

「弊社との契約はサーバ保守です。ネットワークのセキュリティ診断は含まれておりません。そちらはご依頼いただいていない範囲です」

→ 契約書を確認すると、たしかにそう書かれていた。

「ベンダーに任せていた」は個人情報保護委員会に通用しない

個人情報を扱う事業者がセキュリティ事故を起こした場合、個人情報保護委員会への報告義務が発生します(個人情報保護法 第26条)。この義務を負うのはデータを持っていた事業者本人であり、「ベンダーに任せていたから知らなかった」は免罪符になりません。

顧客情報・従業員情報・取引先情報——これらを自社のシステムで管理している以上、そのセキュリティ状態を把握する責任は経営者にあります。ベンダーへの委託は「作業の委託」であり、「責任の委託」ではないのです。

📋 個人情報保護法の報告義務(要旨)

不正アクセス等によって個人データが漏えいした場合、事業者は個人情報保護委員会への報告と、本人への通知が義務となります(2022年4月施行の改正個人情報保護法)。報告義務を怠ると行政指導・命令・罰則の対象になります。

自社で確認すべき最低限のこと

「ではどこから始めればいいか」という方のために、ベンダーに頼らず自社で確認できる最低限のポイントを整理します。特別な知識がなくても確認できることから始めましょう。


まとめ——「任せる」と「把握する」は別のこと

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参考

個人情報保護法 第26条(2022年4月施行・改正)/個人情報保護委員会 公式ガイドライン

執筆:株式会社リープリック(ITインフラ設計・構築・保守 14年)